1階から「ギャオオオオーッ!」という派手な猫の叫び声。
びっくりして下に降りると、らくがタヌキしっぽどころか、全身の毛を逆立ててハリネズミのようになりながらギャロップしている。
まだ起きてて1階でテレビを観ていたくりくりも、部屋の中をウロウロと歩き回っていた。
なんだなんだどうしたどうしたと訊ねると、窓の前でよその猫が、らくにケンカをふっかけたという。
その猫はどうした?
叫び声はらく?その猫?どっち?
と続けて訊くと、猫はくりくりが窓に近づいたら逃げていったけど、5mくらい離れたところにまだいる。
叫び声はどっちだか分からないけど、外から聞えた気がするから、らくじゃないと思う、と。
窓から外を覗いてみると、白地にちょこっと黒い模様のはいった猫が、少し離れた場所にお座りをして、こっちを見ていた。
えー?
あの子は長屋の周りをよくウロウロしてるけど、いつもおとなしい感じで、他の猫さんとケンカしてるとこ、見たことないけどな。
不思議に思いながらも、まだそこにいるし、うちの窓の前に戻ってきてまたらくとケンカされたら困るので、お引き取り願うことにした。
ってことで玄関から外に出ると、ワタシを見るなり素早く逃げていった白黒ちゃん。
もう、うちのイエヤマネコにケンカ吹っかけないでね~と思いながら部屋に戻ろうとして、ふと窓の前(白黒ちゃんがいた場所)を見ると、なにか黒っぽいブッタイが落ちている。
白黒ちゃんたら、わざわざうちの窓の前でウンコしたの?
らくへの宣戦布告か?
ますます不思議に思いながら、しゃがんでブッタイをよく見ると、ウンコじゃなくて、体長12cmほどもあるヒキガエルだった。
・・・原因は、こちらのヒキガエルさんじゃ?
白黒ちゃんは、らくにケンカをふっかけにきたワケじゃなくて、うちの窓の前にいるヒキガエルに興味を引かれて観察しに来ただけでは?
それにらくが怒って、ギャオー!と叫んだのではないの?
たぶん、そうなのだと思う。
でもラクシュミーが怒ったおかげで、白黒ちゃんがカエルにちょっかいを出さずにすんだので、良かった。
ヒキガエルは敵に攻撃されると、耳腺や背面の皮膚から毒のある分泌物を出す。
犬がヒキガエルを咥えて遊んで、毒にヤラレたという事故はけっこう多い(シぬことはあまりなさそうだが)。
毎年ヒキガエルをかまっては中毒を起こし、そのたびに病院に担ぎ込まれている懲りないワンコもいるそうだ。
猫はなぜか、ヒキガエル中毒事故の話はあまり聞かない。
『猫は本能的にヒキガエルが有毒だということを知っているので手を出さない』という説もみかけるが、どうだろう。
猫は犬と違って一人で散歩に行くコが多いので、様子がおかしくなって外から帰ってきたとき、何かの毒だとは思ってもカエルと分からないことが多いのかもしれない。
お外暮らしの猫さんの場合は、カエル中毒になったとしても、人目のつかない場所に行ってしまうので、目にしないだけでは?
(猫さんの場合もシぬことはあまりないようだが、仔猫だったり、カエルを咥えただけではなく食べてしまったりしたら、どうだか分からないと思う。)
白黒ちゃんがヒキガエルの毒について知っているのかどうか分からないが、とにかく手を出さなくて良かったのだ。
ラクシュミー、グッジョブ。
でもせっかくだから、白黒ちゃんのかわりに、ワタクシがカエルを舐めてやりましょう。
で、いったん部屋に戻りビニール袋を手に再び外に出たときには、ヒキガエルの姿は忽然と消えていて、陰も形もない。
気配を悟られたか。
ヒキガエルもバカカイヌシにおめおめと舐められるような間抜けじゃなかった。
念のための注)・カイヌシのtoad licking(カエル舐め)は、あくまでもジョーダンです。
良い子と良識ある大人は、やってもあまりいいことはないので、やらないほうがよいと思う。