フードの種類は増えて、以前からあるものでも製造元が合併したりで、ほとんどの製品がリニューアルされている。
6年前と変わらずに今もあるものは、ヒルズのk/dくらい。
6年前にはなかったフードを開封するたび、くんくんしたり、ポリポリ噛んでみたりしながら、「いっちゃんのときにあったら、もしかしたら食べてくれたかもしれない。」などと思う。
思うだけで、それ以上のことはない。
が、k/d缶を開けて久しぶりににおいをかいだら、ヤラレテしまった。
コバルジン入りで、真っ黒ジャリジャリになったk/dを食べるいっちゃん。
王様のドロボウ柄のお口の周りも、コバルジンがくっついて黒くなっていた。
すぐに飽きて食べなくなったので、私の指先にk/dを乗せて一口ずついっちゃんの口元に運んだ。
それでも食べてくれなくなったら、団子に丸めてお口の中に放り込んだり、お湯で練ってトロトロにしてなんとか舐めてもらおうとしたり。
いっちゃんがコックンしてくれるので調子に乗って食べさせすぎて、ケーで全部リバースさせちゃって、地の底まで落ち込んだり。
そんなこんなが、昨日事のようにリアルに甦ってきた。
だってk/d、7年前と同じにおいで変わってないんだよ~。
k/dはにおいが強いから、すぐそばに置いてなくても、同じ室内にあるとにおう。
そのにおいの中で、しばらくぼーっとしていたら、ぎゃおす長屋も屋上農園もラクシュミーも、ワタシの妄想のような気がしてきた。
目が覚めたら、狭くて古くてボロで豪華絢爛なぎゃおすマンションで、王様にご飯を食べさせるのではないかしら。
私はそれでもいい。
一生、いっちゃんにご飯を食べさせて、輸液していたっていい。
でもそれじゃ、いっちゃんがタマランだろう。
だから、王様は楽しいことばかりの世界で遊んでてもらって、私はもうしばらくこちらでラクシュミーと暮しているっていう妄想のほうがナイスだ。
・・・妄想じゃなくて、もしかして現実だったか。
ラクシュミーが現実なのは非常に喜ばしいが、デブな現実はどうしたものか。