うちは部屋中らくのおしっこ臭くて、人を呼べる状態ではないのだが、裕子ちゃんは平気なのだ。
彼女は猫のおしっこくらい、どうってことない。
そんな裕子ちゃんが長屋に来るのは初めてで、らくに会うのは4年ぶりくらい。
らくはすっかり裕子ちゃんのことを忘れているようで、彼女が部屋に入ってくるなり、スタタタターと素早く2階に逃げていった。
そのまま放っておいて、ニンゲンたちは1階でおしゃべり。
1時間くらいたってイエヤマネコの様子を見に2階へ行くと
閉めておいたはずの押入れの引き戸が開いている。
部屋の中にらくの姿はない。
まさか自分で戸を開けて中に入った?
半信半疑で押入れの中の見てみたが、やっぱりイエヤマネコの姿はない。
ところが、らくーと呼ぶと、
「みょ・・・ん」
という声が聞えて、らくが押入れの布団の間からゴソゴソ出てきた。
こんなに暑いのに、冷房もかかっていない部屋で、押入れの中の布団の間にはさまっていたの?
身体を触ると、ヌクヌクを通り越してぽっぽと暑い。
これは危険な気がする~。
ってことで、押入れに入れないように戸を閉めて、部屋に冷房をオン。
お水を2階に運んで、また放っておいた。
するといつの間にか、階段の途中まで出てきて、様子を伺っているイエヤマネコ。
このあと階段の下、部屋の中で盛大におっぴろがっていた。
裕子ちゃんも美帆ちゃんも、うちに来ると、なるべくらくのことを見ないようにしている。
らくは自分に関心が払われていないのが分かると、だんだん安心して出てくるみたいだ。
美帆ちゃんにはもう、抱っこもさせる。
裕子ちゃんにもあと2~3回来たら、平気で触らせそうな気がする。
慣れなんだろうな。
らくは案外、万が一カイヌシが変わっても、すぐに慣れそうだ。
猫さんはそういう子が多いのかもしれないけど、それって安心のような、ちょっと寂しいような。