引き戸を開けた実績は今までに2度あって、どちらも2階のラクシュミーとワタシの部屋の引き戸だったが、開けている現場を目撃したことはない。
今日の昼間、くりくりが1階でいつになく念入りに掃除機をかけていた。
ワタシとらくは2階にいたのだが、うるさくてかなわないので、部屋の入り口、件の引き戸を閉めた。
らくは平気で猫ベッドで寝ていたけれど、掃除機の音が止まったのをきっかけに、ふと横を見ると、猫ベッドに姿がない。
振り向くと、らくさん、2本足で立ち上がり、バンザイのかっこうをして、閉まっている引き戸に両手をついていた。
観察していると、イエヤマネコは、立ち上がって両手を引き戸につけたまま、じーっとしている。
戸を開けたいのかと思ったが、なんのアクションもないやんけ。
そのまましばらく見ていると、そのうち引き戸が、ちょっとずつ開いていった。
あー。ねー。
なるほどなあという感じ。
いっちゃんは、片手でちゃいちゃいして上手に戸を開けていた。
いっちゃんだけでなく、たいていの猫さんは同じことをすると思う。
らくは全体重をかけて両手で押す、という方法を編み出した。
カーテンの裏側に行きたいときにもその方法をとるが、カーテンは布なので、いくら押しても、もちろん開かない。
屋上のバリケードは、何回か、この方法で突破している。
今日の引き戸も同じ。
両手でぐいぐい押しているうちに、重心がぶれて、引き戸が横に滑って開いた。
『戸を開けられた』という結果だけを見れば成功だが、手段としてはただの力任せ。
猫は知能が高いイキモノだそうだが、その証拠のひとつとして、『手先が器用』という特性が挙げられることがある。
実際に、高い知能と手先の器用さを生かして、どんな形状の戸でもドアでも開けてしまう猫さんもいる。
しかしうちの可愛いイエヤマネコは、そんな猫の特性や世間の評価などお構いなしに、邪魔なものが目の前にあれば、ひたすらぐいぐいと押しまくる。
引き戸でもカーテンでもバリケードでも、とにかく全体重をかけて押す。
知恵や手技がなくてもダイジョーブ。
らくは、力で破壊する。